三十年余以前のことである。さる用務を持ったご老体に付き添っての仕事があった。お気に召したのか、自筆の色紙を頂戴したので、部屋の入り口の上に掲げておいた。

 先日ふと見たら、雅号の上に「八十一翁」と記されているではないか。おや、自分はその年齢を超えていると思う。

 苦笑がこぼれた。まだ己を「翁」と称するのははばかられると思いながら。