すき焼き
 自転車で3キロ先のスーパーに行く。雪が降る日には、自転車にも乗れなくなるので、買いこんでおくつもりだった。肉売り場の前を歩く。

 「しゃぶしゃぶ用」のパックを求める。戦後はじめて、フライパンで、すき焼きの真似事をした。生卵を使うことなど知らなかった。いわんやしゃぶしゃぶにおいておや。

 昭和22年の冬だった。あれから60余年、贅沢になったものだなどと思うのは、飢餓体験があるからだろうか。