どっち?
 電車の中で自然に聞こえてきた会話。
「Aの家では夫婦で役所に勤めているから、このご時世では特別な階級だね」
「不景気になると公務員はいいというからな」
「運がいいのだなあ」
「いや、先見の明があったのかも」
 他愛のない会話を乗せたまま、私が降りたあと電車はすぐ発車した。特別暑い夏の夕方だった。