現職の頃、しばしば、さるご老人のお供をした。よくやってくれたという意味だったのだろう。書が得意の方で、「江風清月」とかかれ色紙をいただいた。

 先日、架けてあるのをふと見たら。八十一翁として、下に雅号が記していあった。あれぇ、自分はもうその年齢を、とっくに超えているではないか。

 時間とはいったいなんだろう。不思議な気がした。もっとも芭蕉などは、四十代にして自分のことを「翁」といっていたのではなかったか。それにしても参ったなあ。「翁」なのだ。