見切る。
たしか94年の暮れにはじめて顔を合わせている。95年からは年10タイトルくらいのペースで推移したから12年と半年。100本以上のタイトルを共に仕上げてきたことになる。Pとしては彼が最多。なんとか生き延びてもらいたいと思ってきたような気もするが、それも半年くらい前からはどっちでもよくなっていたように思う。きのう渋谷に向う途中でワタナベの携帯にかかってきた電話を俺がとった。むじなのHさんからだった。前日に退院したと言う。入院したことも体調が悪かったこともまったく知らなかった。もうダメかなと覚悟してたよ、と笑いながら言われ、その声の細さに返事に詰まった。人の一生は文字通り一回限りの「生」。Sにかかわっている時間は、もうねえなぁ、と思う。交渉なしで視野から外れてもらう。あるいは俺がその視野から外れる。そう決めた。雨。