がけろう 記憶4
熟した果実が落ちるのを見たひとりの男が《引力》を発
見し、大空を飛び交う鳥に憧れた兄弟がいつか飛行機を
つくった?
ほんとうはいつまでもモノに引きつけ合う力があること
を理解しようとしない人類に、あるとき大地が真っ赤な
リンゴをいくつもいくつも落とすことで気づかせてくれ
たのかも知れない。あるいはいつまでも地面にへばりつ
いて離れようとしない人類にあきれた大地が鳥に頼んで
空飛ぶたのしさを教えようとしたのかも知れない。
私たちが達成したことは私たちだけの力で成し遂げられ
たのではなく、地球という超巨大な生命体そのものが、
いっしょに快適に暮らしていこうじゃないかと、その大
きな指で私たちの背を少しだけ押してくれたからではな
いのだろうか。
私たちに遺された私たちを支える先人たちの発明や発見
は、そのすべてが地球とともにあったのではないか。ア
タマと体と大地がひとつになって、はじめて現在という
世界ができあがったのではないか。
私たちは46 億年の時針を持った地球時計の最後の数秒
間をかげろうのように生きている。そのすべてをこの超
巨大な生命体・地球にゆだねながら…