覚え:よおそろ 2002.8.27
去年の夏の盛りに書き上げた演出プランの後書きを、ここにコピーする。この思い込みがどこまでカタチとなったのか、あるいはならなかったのか。書き上げた日の夕、はじめて繋留されている氷川丸に乗った。海風に吹かれながらビールを飲み、火照った脳を冷ました。スタッフ達がいま、最後の仕上げに徹夜でかかっている。おれは一人離れて東京で産業革命から明治22年までこちらは鉄路の蒸気の旅を続けたが、さすがに今夜は力が尽きた。第二革命と第三革命のメモは明日にまわし、眠ろうと思う。
開港の街で夜を徹して最後の鞭をいれているすべての関係者に愛をこめて、われわれが行こうとした世界、われわれがカタチにしようとした想いをあらためて引いておく。たとえつたない情熱であっても、われわれはこんな想いでこの一年を過ごしてきたのだ。日本郵船博物館のテーマは進行形。その瞬間にし残したことがあったら、明日がある。行ける所まで行ったら、胸を張って扉を開けるように。悔やむことも恥じることもない。
諸君、港だ。錨を下ろすぞ。


2002年8月27日の後書きより++++++++++++

明日は
どんな光と色にいろどられ
どんな風をなびかせて
私たちの前に現れるのか


岩崎弥太郎の獅子吼とともに
その幼い歩みを踏み出し
彼の描いた夢と志を未知の海図とした
私たち日本郵船は
百余年の歳月を過ごしてここにある


そして
私たちは海に囲まれ海とともに
その歴史を綾なしてきた
日の本の、海の民の末裔である


目にも鮮やかな緑でおおわれた
このいくつもの島々を
日本という名のもとに
一つの国としてまとめあげた
海の民の末裔である





私たち日本郵船は
二引の旗と日の丸を掲げ
七つの海をわが庭とし
肌の色も目の色も異なる
たくさんのひとたちを友として
百余年の歳月を航海しつづけてきた


この歴史資料館には
私たちがこの海の国を母国に
七つの海をこえて為してきた
あるいは為そうとして果たせなかった
無数の思いと試みの痕跡が
夢の破片の一部が
とどめられ展示されている


さらにみなさんが立っている
この場所には
私たち日本郵船が
今日というこの瞬間に刻みつけている
現在進行形の歴史が表示されている
同時に私たち日本郵船が
その先の明日に残そうと夢見る
航跡の姿が提示されている


その夢は
弥太郎の夢想から
どれだけ遠ざかったのか
近づいたのか

そして 乗り越えられるのか


よおそろ!