歳月は、夢のようには、消せない。
男の夢を見ることはほとんどなく、あってもきっと忘れている。けさ、男の夢を見、その一部をシャワーを浴びている最中に思いだした。自分がやったのではないムービーについてその男が話しづらそうに聞いてきた。やや正直な感想を伝えると、それはその男がつくったものだという。黙って先を促すと、気になってならないので手を入れて欲しい、と。改めて顔を見ると泣き顔だった。どう答えるか迷っているところで夢の記憶が消えている。二日前の夜に、その男と会っている。男の気配に窮状があった。耳に届いているいくつもの噂がほぼ事実なのだと思わせる悄然とした雰囲気がこぼれていた。錯綜する思いはあるが、15年という濃密な歳月もまた事実。おれにできることはすくないが、出されたら手を握ろう。そう決めた。搦め手からはここ何年も攻められ続けてきたが面と向かっての攻撃はゼロ。まともに対応してくれていた。
歳月は、夢のようには、消せない。感傷ではある、が。