[tojibu2:00260] カタチは色を夢に見た。
件名 : [tojibu2:00260] カタチは色を夢に見た。
送信日時 : 2002年 3月 6日 水曜日 1:02 AM
差出人 : Toru Mashiko




  啓蟄の、あるいは春一番のましこです。


  HD-F900は
  昨夏のテスト撮影から、昨秋のマキシオ、今年のβラボ/シャーメゾンと
  4度目のチャレンジになりますが、この春のWe's DYNEで
  オープン撮影/ロケセット撮影時のベーシックな技術的側面をほぼ
  完全に把握しきれたと考えます。

  今後は、
  フィルターワークなどを含めた特殊撮影をおいおいチェックしつつ
  スタジオ撮影をテストできれば、言うことなし。

  昨日までの分のOK出しをまとめたものをビデオにして持ち帰り
  いま家庭用のテレビでチェックし終わったのですが、
  自分のディレクターとして過ごしてき経験の中で
  もっとも美しくキレの良い映像をモノにできたな、と思います。

  撮影条件、タイミング、ターゲットの出来など好条件が揃ったとはいえ
  ここまで見ごたえのある空気感を表現できるとは想像していなかった。
  目の前に広がるユビキタスな世界では、
  すでにプロとアマとのボーダーが急速に消失しつつあります。

  業界を自称する私たちがタカをくくっている間に
  就学前からパソコンゲームやテレビゲームに慣れ親しんだ子供たちが
  いつのまにか二十歳を過ぎています。
  「こんなもんだろう」と貧しい経験だけを頼りに
  縁日のテキ屋のようなごまかしをぎっしり詰めたブラックボックスを
  後生大事に守ってきた「映像業界」はいま、
  たかが二十歳そこそこの学生たちが暇にまかせてつくり出す遊びの延長に
  あっさりと置いてきぼりにされ、そのことに気づけずにいる。
  問題なのは「情報デバイド」ではなく「感性デバイド」なのにね。

  ま、そういう不安をさっと吹き払わせてもらうのに
  HD-F900は福音の1つである、ということをしみじみと実感させられました。


  何を大げさな、ビデオカタログの素材を撮ったくらいで…
  と苦笑される人もいるだろうけど、
  この世界、「思い込み」が最大の武器だから、ね。


  できたら今回の素材から
  DVD-R0Mによるライブラリー化をスタートさせたいと考えてます。
  ウエブ・ライブラリーがスタートすればそのまま移行しますが、
  当面はディスク上でランダムかつインタラクテイブな
  素材の交通整理をはじめましょう。
  長岡君達のチャレンジのおかげで、つい数時間前まで
  撮影素材の処理はハードディスクとブロードバンド上で
  徹底したランダム性を維持することができていました。
  ランダムであるということは、モノを作るうえで
  実は最も大切かつ基本的な要素だと思います。
  
  アナログの代名詞のように言われているフィルムだけど
  いちばん重要なラッシュ編集時には
  実は各カットを切りだしてずらっと並べて俯瞰しながらムビオラで確認する。
  
  つないだものを見ながらコンティニューを決めるというのは嘘です。
  デジタルであることのスゴミは、
  この俯瞰と眺望という行為を一気にパラレルに可能にするわけです。

  そしてコンティニューにもしマジックの要素があるとすれば、
  それはこの俯瞰と眺望にこそ、つまり渾沌の中にこそあります。


  マジック=思いつき
  ではありますが。


  撮影から数時間前まで、
  ぼくはディレクターとしてはじめて「ランダム」な時間の中に
  身を置き、眼を遊ばせることができました。
  浮かんでは消えていく無数の思いつきに翻弄されながら
  軽い酩酊感を味わっています。


  HD-F900の卓越性、倉持さんの感覚、長岡君の実験精神…
  もちろんすぐれた撮影対象と機会を提供してくれたクライアント?
  あれもこれもが一気に揃った春だからなんだろうけど。


  記念すべきステップになるのか、
  春の椿事で終わるのか、怪しむ向きもあるかとは思いますが、
  大好物のえさを目の前にした、ぽちのような今夜のワタクシとしては、
  興奮をお伝えしておくことで背水の陣をしきたいと考えます。


  ご期待下さい。
  と、結びたかったので。





  P.S.
  素材を見直しながら浮かんだ冒頭の1行は、

    「この家がコンクリートでつくられていることを、
     あなたが信じられるといいのですが」

     あるいは、

    「カタチは色を夢に見た」