跋。12.17発
以下の手紙を添えて発送。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++


益子です。


かねてから計画していた
《デジタル・ジャパネスク》シリーズを離陸させたいと考えています。
まだ茫漠とした想いがあるだけで、どんなスタイルでどんなカタチを結ぶのか
海も山も見えない状態ではありますが、歩みだすことに決めました。



現時点ではっきりしていることは、すべての撮影をデジタルHD-F900品質、
あるいはそれ以上の品質を備えた機材で行うこと。
向こう十年、あるいはそれ以上の歳月を劣化も低減もなく、
われわれが望んだ状態のままで維持・保存・再構築に耐えられる
最良の映像素材を遺すこと。
それらの素材を縦横に再構成し、まだ誰も見たことのない
日本の抒情的世界をつくりだすこと、です。



私は日本という国がすでに滅んでいるのだと考えます。
この国のシステムは少なくとも滅びの崖っぷちを踏み越えたのだと感じています。

国破れて山河あり、と言いますが、
立ち止まったときに、ここまで戻ればもう一度、
歩みだす力が湧いてくる場所。イメージ。
絶望ではなく希望を杖に頭をもたげてみようと、思い直せる世界。
そういうものを映像として構築したいと思い描いています。


これまでともに仕事してきて、ぜひ力をお借りしたい、
いっしょに取り組んでいきたいと確信する方にのみ
この手紙と、一冊の絵本のコピーをお送りすることにします。
《デジタル・ジャパネスク》シリーズを進めるにあたり、
迷ったりとどまりたくなったときに、同封の絵本の世界を
思い起こしていただけたらと考えました。
《女鬼》とタイトルされた絵本を、かかわるすべてのスタッフの
ただひとつの旗印にしたいと思います。




賛同いただけたら、
どうぞ呼びかけの声が聞こえたときにお応えください。
賛同いただけないときは、この手紙と絵本はお捨てください。
そのことはこれまでの仕事で築いた関係になんの影響もありません。


2001年12月17日夕記す