さようなら
監修のオーエン博士、国立天文台の渡部先生と三人で記者会見に挑む。
誰に向かって何を語っているのか、途中すこし気になったが、今日が最後ときめ、福島の観客予定の人たちに向い、檄を飛ばすつもりで話した。オーエン夫妻、渡部先生ともに、はじめての3D大型映像に喜んでくれていた。とりわけ雪の降るシーンは、みなさんとても気に入ってくれたようで、嬉しかった。
オーエン博士から別れ際に絵文字の刻まれたペーパーナイフをもらった。一ヶ月前にハワイ島で別れた人と須賀川のむじなの森で別れる。もう会うこともあるまいが、「ワンダフル」と言いいながら微笑まれたときにちよっとぐっときた。
フランスからエクス・マキナのベンたちも来てくれた。ベンとは思わず抱きあってしまった。見ごたえのあるとてもいいコンピュータグラフィックスを一年がかりでつくりあげてくれたことに深く感謝しながら。
彫刻家の安藤さんからエッセイ集をいただいた。いつかまた一緒に仕事をしようと握手して、暗くなった水のアトリエの前で別れた。
こうこうと照らすむじな山の頭上高くあがった十三夜の下。ナイトファンタジアの準備に余念のないジ・アース前の水辺で
そのほかに、出会いと別れがいくつも同時に起きた。
七月四日夜。演出としての水惑星への関わりはこれで終わってもいいな。二年あまり。長かったが、最後はとても短くあっという間に過ぎていった。
あとはオープンの七日まで余韻の中ですごし、卒業しよう。
人と一緒にいるとなんだか涙がこぼれそうな気がして、シャワーを浴び、一人でホテル内のレストランで時間をかけて食事してきた。肉と四杯のコーヒーで、手に入ったすべての新聞と、福島泰樹の短歌を一冊読了。
いろんなものにさまざまな想いに別れを告げた。
つもりである。