この国にはすべてがありながら、「希望」だけがない。
「希望の国のエクソダス」村上龍/文藝春秋社

二週間余りかけて、間にいろいろはさみこみながら昨夜読了。村上が提示したこのイメージは深く濃い。ひとり想像力に満ちあふれた小説家だけが到達する鋭い予感性に満ちたこの「エクソダス」を、時代のエッジとして読まれることを願う。それにしても村上龍はなぜここまで激変し続ける時代の波乗りをいちども脱落することなく維持し続けていけるのか。そのことが不思議でもあり、ごく当然のことでもあるように思えることを、あの不安定きわまる世代に共通する負の遺産なのだと考えることはできないか。
解決のタダ一つの方法は「不登校」であるという仮定。これはあのときに17歳だった世代ならではの実感だと思う。面白かった。元気が出た。真夏の強力ビタミン剤のような、鮮烈な小説だった。
乾杯。