愛する人のスナップショット
『愛する人を、さまざまな角度からいつまでも眺められるスナップショットのような新しいメディアこそが、世界的にアピールしていくだろう』

マトリックスのCGディレクターJohn Gaeta.に
「2015年のCGはどんな世界を獲得していか?」
という質問への答えである。
あのマトリックスや「奇跡の輝き」を手がけた当代随一のCGクリエーターの答えとしては
やけに軟弱ではないか?
そんなふうに思った人に、なぜこのコトバを
エピローグのキーワードにしたかをちょっと弁解。

一年あまりまえの冬、
一緒に仕事をしている人の妻が急死した。
その人はどんなふうに痛みや哀しみをこらえたのか手がけていた仕事を完成させた。
完成した仕事を一緒に見ているときに、
スーツのポケットからそっと取り出した
一枚の写真。その人の妻の写真だった。
一年以上をかけた仕事の仕上げだたった。
きっとその人はいなくなった妻に、「ほらできたよ…」といって見せたかったのだと思う。
見せられた強気が自慢の某プロデューサーは、それからすっかり泣き虫になり体調までくずしてしまった。

コンピュータグラフィックスが
これからどんなふうになっていくのか
どこまで到達しようとするのか
ぼくにはわからないが、
たった一枚のスナップショットにも
これだけのインパクトがあるのだ。
そのスナップを元に
愛する人のなつかしい仕草や
言いまわし、なんでもない
ちょっとしたコトをできるだけリアルに
手を触れたくなるような現実感をともなって
再現することができたら…

怖いようにも
素晴らしいことのようにも思える。

John Gaetaが、はたして
どのあたりまでを射程に入れて話したのか、
想像するしかないが、
生まれてわずか50年も経たずに、
コンピュータグラフィックスは
はるかな高みへと向かっているように思えた。

かなうなら、
ぼくも何人かどうしても会いたい人がいる。
もういちど会って、
「ありがとうございました」と伝えたい
人たちがいる…