林えり子著『竹久夢二と妻他万喜』 岡山
 林えり子著『竹久夢二と妻他万喜―愛せしこの身なれど-』。 (ウェッジ文庫)

 竹久夢二が岡山県邑久郡の出とこのたび知った。群馬の伊香保にあった資料館はいかにという経過も、本書をつうじて判明したが。
 岡山・後楽園のほど近い、川をはさんで美術館がある。そこのミュージアムショップで本書を購入。

 妻・他万喜について「正当な評価」をというのが、本書の基盤になっている。著者の構想も評論家の評価もその点では一致。

 読んでいて主人公の妻を置いておき、夢二の交遊の広さ。
 20世紀初頭の社会主義者たちとの接触のなかで、画風が培われた点に意外さを。考徳秋水、大杉栄、神近市子らの名前がつぎつぎに登場。
 次の時代に登場する東郷青児らが、周囲にいたのだ。

 早稲田の近くの絵葉書店で店頭に立つ若い娘が他万喜。
 明治の女性にしては奔放に生きているようにみえながらも、他万喜のもつ描画の力が夢二を「育てた」の視点が、結婚、離婚、しかし同居の説明のしにくい女性の一生を紡ぐ糸と、言いたいのかも。

 ストーリーの展開の構造が、自然で説得力をもって展開する。豊富な取材、とりわけ当時、両人と直接交遊のあった人を通じての情報が、ストーリーを支えているの、感。 (ウェッジ文庫 2008年) 

編集 freehand2007 : 竹久夢二は群馬・伊香保に展示館があり暫くは群馬ゆかりの人と思っていました(汗)。今回、独特の美人画の雰囲気とは遠い思想家との接点を知り意外感、他方で華やかな周囲の女性群にそこちのモデル存在を思いましたけれども。
編集 ペン : 竹久夢二の生涯はコミック漫画で読んだくらいなので(汗)世の中が大きく動いている時代には個性豊かな人が出現しますよね^^