「沈丁花(ジンチョウゲ)」
ジンチョウゲは中国原産で、樹高1m以下の小木です。

 花の香りは素晴らしく,千里のかなたまで香りが届くという意味で,千里花」ともいわれています。
 
室町時代に薬用として中国から日本に渡来しましたが,その香りから,庭の花木として広く楽しまれるようになりました。

中国では「瑞香」と呼ばれ、縁起の良い花として、古くから珍重されています。

ジンチョウゲの漢名は「瑞香」といいます。

 昔、盧山に比丘という名の僧が住んでいました。
比丘が山中で昼寝をしていた時に、甘く情熱的な香りを放つ木の夢をみました。
比丘は目がさめてからもその香りが忘れられず、あちこちと探し求め、とうとうその芳香を放つ木を見つけて持ち帰りました。
その名もない木には花が咲いていました。
盧山はその木を、夢で出会った香りという意味で「睡香」と名付けました。
 後にこの話を聞いた好事家が、これは祥瑞(めでたい前兆)であるということで、睡を瑞にかえて「瑞香」としたそうです。

 和名の沈丁花の名の由来としては、牧野冨太郎博士の「花の香りが沈香(じんこう)と丁字の香りに似ている。」という説や大言海にある「香、沈香のごとく、花、丁子に似たりとてこの名をなす。」という説等があります。

 雌、雄が異株で、雌株には赤い実がなりますが、日本には雄木が普及し、雌の木がほとんどありません。


 沈丁の 香の石階(せっかい)に 佇みぬ  高浜虚子

 沈丁の 葉ごもるる花も 濡れし雨    水原秋桜子