2014年09月の記事


赤トンボ
すっかり秋の気配が濃くなり、野山では「秋桜(コスモス)」が咲き始めています。

 コスモスは繊細な見た目とは違い、しっかりと大地に根を張り、踏まれても薙ぎ倒されてもまた立ち上がり花を咲かせる力強い植物です。

 また、低地ではそろそろ赤トンボを見かける時期です。

 トンボの名前の由来は「飛ぶ穂」あるいは「飛ぶ棒」とも言われますが、秋茜や深山茜に代表される赤トンボの古名は「秋津」と言い、実りの秋を象徴する虫として昔から愛されてきました。

 古くは日本(本州)を秋津州(あきつしま)と呼んだのも、神武天皇(神話上の初代天皇)が山々に囲まれた国の姿を、雌雄のトンボが交尾をしながら輪になって飛ぶ姿になぞらえたという故事に由来します。

 また、雄略天皇が、害虫を素早く捕らえるトンボの姿を歌に詠み、前進するのみで後退しない不退転の攻撃的な姿と相まって、トンボは昔から勝ち虫と呼ばれる武者好みの縁起物で、戦国の世では兜や鎧などの装飾に好んでよく用いられてます。

 昔の人はトンボに勇猛さを感じたようですが、童謡「赤とんぼ」のイメージが残る現代の私たちにとっては、どこか郷愁を誘う秋の虫です。
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「昔話」
「温故知新」とは申しますが、現代では昔のことを知ろうとすることよりも、新しい知識や技術の習得に忙殺されがちです。

 昔は、どこの家庭でも両親や祖父母らが、小さい子に様々な昔話を話してきかせていたように思います。
昔話は、単に話としておもしろいという他に、人への思いやりやたくましく生きる知恵といった、たくさんのメッセージが込められています。
もちろん教訓話ばかりでなく、主人公が様々な軌跡をたどりながら成長していく過程を語っているものが少なくありません。

 昔話の残酷な面をことさらに強調した解釈が流行った時期もありましたが、子供たちが夢中になっているゲームやテレビ番組のほうがよほど残酷な描写に溢れています。
本来の昔話にはたしかに残酷な話もありますが、それは自然が持つ残酷さと同じ程度の残酷さであり、それを伝えながらもその残酷さについての詳細な描写を語ることはありません。
又、前向きで元気が出る話も多く、拒絶するばかりではない世の中のことをも教えてくれます。

 本屋で、幼児向けのコーナーにふと目を向けると懐かしい昔話の本がたくさん置いてあります。
細かい点で結末や筋書きが昔と違うものもあるようですが、昔話の効用は現代のお母さんもきっちり理解しているのだろうと思います。

 昔話を単に教訓話として伝えてしまうと聞かされた子供達はお説教と捉えてしまうかもしれません。
昔話という形式をかりて「子供の成熟のために彼(彼女)に自己と人生についての健全なイメージを暗示し予感させる」というところに大切な意味があると思いますね。
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「彼岸花(曼珠沙華)」
 燃えるような花色の彼岸花は、秋の彼岸の頃に咲く花ゆえにこの名がついたと言われます。
国や地域によって花に対する感じ方も様々で、彼岸花にもいくつかの異名があります。

 根に毒を持つ花なのですが、*飢饉の時は澱粉が豊富な根を食用にすることもあったそうです。
毒抜きが十分でないとあたることもしばしばで、彼岸(死)の花という説もあり、その毒性と相まって、葉のない状態で地上に突出し神秘的な花を咲かせる様から「地獄花」「死人花(しびとばな)」などと呼ばれることがあります。


*ヒガンバナは生命力が強く、痩せた土地にも育って、大きな 球根をつくります。
 球根には毒が含まれていますが、よく水洗いすれば消えてし まいます。
 ヒガンバナは毒」と信じて、人々は誰も近づこうとしません でした。
 ところが、草花について博識なある殿様が、しきりにヒガン バナの球根を集めていました。
 冷害と日照りが続いたある年、米が凶作のため、全国で多く の人が飢え死にしました。 
 しかし殿様が治めていた地方では、殿様が蓄えていたヒガン バナの球根のお陰で、飢え死にを免れました。


 日本に存在する彼岸花の遺伝子は全て同一で、中国から伝わった1株の球根から日本全国に広まったものといわれています。
彼岸花は「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」の名でも親しまれていますが、これはサンスクリット語の音写で「天上界に咲く小さな赤い花」という意味で、吉事の兆しに赤い花(曼珠沙華)が天から降りてくると仏教の経典にはあるそうです。

 葉のあるときには花はなく、花のときには葉がない曼珠沙華を、おとなり韓国では「花は葉を思い、葉は花を思う」という意で「相思華」と呼ばれるそうです。

 ちなみに、曼珠沙華はその花の美しさから、海の女神を意味する「リコリス」という学名を持ちます。

曼珠沙華の名所、埼玉・日高市の「巾着田」
見頃は来週9/17日頃だそうです。
http://www.kinchakuda.com/
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