「電力の供給」
 当時、原発の安全性の検証や設計に関わった技術者達は、マグニチュード9の地震や、航空機が墜落して原子炉を直撃する可能性まで、想定するよう上司に進言したそうですが、上司は「千年に一度とか、そんなことを想定してどうなる」と一笑に付したそうです。
実際には千年に一度と言われるM9の地震が発生し、想定を大幅に超える大津波が原発を襲いました。

 土木学会の阪田会長は「安全に対して想定外はない」と言います。
「今回の震災は未曽有であり、想定外であると言われる。我々が想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない」と。

 ところで、日本の電源周波数は東西で50ヘルツ(Hz)と60Hzに分かれています。
明治の頃、関西の電力供給を担っていた大阪電燈が60Hz仕様の米ゼネラル・エレクトリック(GE)社製発電機を導入したのに対し、関東の電力供給を担っていた東京電燈が50Hzの独AEG(現在はスウェーデンのエレクトロラックスの傘下)社製発電機を導入したことに起因するそうです。

 世界的に見て周波数が混在している国は少なく、先進国では日本のみでだそうです。
いくつかの周波数が混在していたイギリスやアメリカでは周波数を統一していった歴史があります。

 現在、福島第一原発が止まってしまった東京電力の電力供給能力は約3800万キロワット(KW)で、需要に追い付かない分は計画停電の実施で補っているそうです。

 北海道電力は東京電力と同じ50Hzを採用しており、余剰電力を融通することが可能だけど、能力に60万KWの上限があり、現在は被災地の東北への供給に振り向けているようです。また、西日本の60Hzの電力を、3カ所の変換所を通して50Hzに変換して東日本に送電するとしても、その最大能力は100万KWに過ぎません。

 現在停止している火力発電所を大急ぎで稼働させても夏場のピーク時には1000万KW前後の電力不足が生じると見られており、様々検討はされているものの今のところ不足分を補うメドは立っていないようです。
春秋の時期は減少するにしても、来夏まで(1年以上)計画停電が長期化するとの予想もあります。

 もちろん被災地外に住む生活者の立場から一定時間の停電くらいは皆辛抱します。
しかしながら、想定外であったとしても、これほどの長期間、電力の供給がとどこおるという事態は、一国の政策としてありうべからざることです。