「大暑」
 二十四節気「大暑」の日のきょうも、その名のとおりの炎天でした。
大暑は一年で最も暑い時期と言われますが、本来の旧暦の大暑は一月後になります。
連休中に日本列島はすべて梅雨明けしこれからが夏本番、暑さはまだまだ続きます。

「念力のゆるめば死ぬる大暑かな」 (村上鬼城) 

*子規に教えを請い、やがて「ホトトギス」同人となり、「境涯の俳人」と呼ばれる。


 その暑い夏をさらに盛り上げるのに一役かっているのが、鳴き競うかのような蝉の声です。

 何年も土の中で過ごし、脱皮して鳴けるようになった蝉は、そのわずかな期間を精一杯生きます。
そのような蝉を、人間の生まれ変わりとする伝承が各地に数多く残っているそうです。

 蝉の抜け殻を「空蝉(うつせみ)」と呼びますが、もともとはこの世に生きる人という意の「現身・現し臣(うつしおみ)」が語源で、現世という意味も持つそうです。

 空蝉という言葉は、樋口一葉の短編や源氏物語の表題にも使われ、万葉集などでの「うつせみ」は「人」や「世」にかかる枕言葉です。蝉の儚さ、空蝉のすぐに壊れてしまいそうな脆さや危うさは、まさに「人」であり「世」であるような気がします。
 
 ちなみに源氏物語に登場する空蝉は作者である紫式部自身がモデルではないかと言われています。たった一度だけ肌を合わせたものの、その後は拒絶を続けた空蝉は、源氏にとって生涯
忘れることのできない女性として描かれています。

 又、一葉は「とにかくに越えてをみまし 空蝉の 世渡る橋や夢の浮橋」と詠み、儚い世の中なれどとにかく生きていこうとの思いを歌にしています。