「虫媒花、風媒花」
 3月は別れ月と言いますが、今は学校の卒業式シーズンです。
多くの生徒が巣立つ学校には桜が植えられおり、その桜の蕾が新しい生徒を迎えるために膨らみはじめています。

 ところで、植物が美しい花を咲かせ、密を分泌し、甘い香りを放つのは、鳥や昆虫などを誘引し彼らに花粉を運んでもらい受粉を媒介してもらうためです。

 このように虫や鳥を誘因するために適応し進化した花を「虫媒花」または「鳥媒花」と呼びます。

 一方、風に花粉を運ばせることを選択しそこに運命を委ねたのが「風媒花」。
虫や鳥に限らず人間にとっても魅力的な美しい花や甘い蜜は、風媒花にとってはすべてが無用なもので、目立たない花をつけ、風が吹くのをひたすら待ちます。
そのため風媒花の花粉は風に乗りやすいようにさらさらしており、量も多いのが特徴です。

 生き残る術として風に花粉を託すのが風媒で、そこに悪気は一切ないのですが、時として悪者になってしまうのが風媒花です。

<虫媒花と鳥媒花の違い- サザンカとツバキの例>

・ 虫媒花も鳥媒花も動物に送粉の役割を担わしている。
そのため動物に気付かれるように目立つ色を必要とし,匂い(香り)を出す。
・ 動物に目立つだけでは空振りに終わるので報酬を与えて花粉を運ばせる。
鳥は虫より体が大きいので引きつけるには多量の蜜が必要であり,
ツバキは多量の蜜を分泌しなければならない。
・ 動物が吸蜜して送粉するときは花に接触することになる。
接触によって破壊されたり,蜜だけを盗られるようであれば植物にとって代償が大きいので,
接触によって破壊されない構造,受粉に結びつく行動になるような構造をしている。
・ そのため,鳥媒花であるツバキは丈夫な構造であり,花は斜めになってついており,
一方虫媒花であるサザンカはできるだけ目立つように上向きに咲く。
・ ツバキのおしべは合着して筒状になっている。
鳥がくちばしを差し込んで蜜を吸うときくちばしや頭部に花粉が付着しやすいよう,
筒の内部にも葯がある。
・ 花の咲く時期が,送粉する生物の違いによって異なる。
真冬は活動できる昆虫はほとんどいないので,サザンカは初冬までに咲くことが多い。
ツバキは恒温動物の鳥によるため,厳冬期に咲いても受粉が可能となる。
このため,開花期はサザンカが晩秋から初冬にかけて,ツバキは初冬から中春にかけてと違いがある。