宮子あずさ著『看護婦たちの物語』
 中堅看護師 
 物語の主人公、内科病棟に勤務する中堅看護師を通じて、10話10人の患者、その家族、患者をとりまく医療チームが紹介される.

 人間模様.
 末尾に、人間がドラマをつくるのか、病気がドラマをつくるのかと、問うくだりがある
 それほど、さまざまな人間、人生、生活が展開するが、そこは病をえての人間の本音という、やはり<正直>な<生き様>が表明されていることになるのであろう.

 10話10人.
 いずれも病院で臨終をむかえる.治癒して退院ではないだけに、「よかった、よかった」はなく、患者、患者家族と医療チームの間に生ずる葛藤と、反省の弁が多い.

 対象読者.
 読み続けながら、本書はどのような階層のひとが、なんのために読むのかを、考えた.
 初出は看護協会の機関誌らしいから、それなら同業のひとたちが、目をとおすことを期待してのものであろう.
 職場で生ずる同業者のストレスを緩和し、現場で展開される治療方針を検証し、医療の進化と深化に資することになるのであろうか.

 でわ、市民が読んだら、いかなることが期待される?.<入院前に目をとおし、手のかからぬ患者>になってほしい?.
 案外、そういうことなのかも、しれない.(弓立社 1992年)