大石慎三郎著『江戸時代』
 大石慎三郎著『江戸時代』。中央公論社の新書版にして、よく読まれた一書かとおもう。
 江戸時代の概説書ではあるが、時代の軸になるテーマをすえて概観しようとする点が、すこぶる意欲的で、好感をよせられてきたのかも知れない。

 「世界史に取り込まれた日本」は、金銀輸出を軸に中国・ヨーロッパとの位置を見る。
 「大開発の時代とその終焉」は水路・新田開発の増産時代の次に「小農自立」、農業技術書、洪水多発で「農政大転換」を説く。

 「構築された社会」は身分制の定着と城下町、「江戸の成立」は「屎尿と塵芥の問題」で循環型社会のシステムを説明。
 「絹と黄金」は徳川家の娘の衣装から京都文化の構造を見る。

 「分水嶺の時代」「顔の社会」は、年貢徴収システムの揺らぎ=年貢収納率低下を示しつつ、「役職と家格」という支配の枠組みを提示。
 「近世から明治維新」。東日本と西日本の農村構造にある寄生地主化の進展度を描き出す。、

 江戸時代は、庶民の細部が見えてくる時代。他方で欧米、中・朝との交渉も具体化。
 アジアでは列強による植民地化がすすむ時代に、近代を迎えた我が国の「基盤」がなんであったのを示しているように、思えるのだが。

編集 freehand2007 : 別な本に、その循環システムの緻密さが、下水道処理の導入を日本では「遅らせた」と。上からの水道は急いだが、終末処理のお金がなかったのではなく、「実は必要なかった」と書いてありましたが。
編集 ペン : 江戸と一口に言っても最初のころから後半へ向かってかなり雰囲気は違ってきていますね。江戸は世界一の大都市でもあり清潔な街でも会ったようです。何しろトイレがあった(笑)あのベルサイユでさえトイレの無い時代にきちんと回収システムまであったのは画期的だと思います。