知恵のゆくえ
 10月27日、都道府県紙で配達された夕刊のコラム欄は、「増える空き家」。

 首都圏の賃貸住宅ではメールボックスに新築戸建てのチラシが詰め込まれ、「閉口する」ことがある、との指摘からはじまる。

 2008年統計によると、全国の総住宅数は5750万戸、03年から08年までに370万戸の家が建ち、空き家は757万戸あるとする。8戸に1戸が空き家ということになり、人口推計上では2100年には3660万人に全国の人口が減少するという。

 国民の数は江戸時代規模に戻るということ、か。そこで、問題提起。

 「住める物件が使われないのはもったいない」から、「空き家バンク」や「空き家を利用した体験移住事業が盛んだ」と、ある。

 むすびに「今から知恵を絞る必要があるのでは」と、あるが。その知恵こそが問題。実はそこが聞きたい。

 文化の醸成ということが必要ではないか。新築、解体、廃棄物では、省資源にも省エネにも環境問題にも背をむけている。

 建築業もリフォーム、再生だって、本来なら新築ほどではないが、それに近いコストの修復は、実はたくさんある。

 しかしこれまで、《長持ち》を度外視して、新築で事業の継続をめざしてきた。外から内需拡大をいわれると、公共事業を喚起し、必要性より土木・建築業の業務保持を優先し、口利きの政治家に、資金が還流してきた政治体質も見逃せない。

 文化は、自然に醸成されるようにも思うが、意図的・計画的・組織的に、好き嫌いではなく取り組まねばならぬ課題でもあるようだ。

 《知恵のゆくえ》のその先には、新しい国民性、文化の芽生えという転換が不可欠のように、思うが。