「桜の季節」
 桜のまぶしい季節、急ぎ足で満開の時期を迎えています。

『ひさかたの 光りのどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ』

『花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに』


 ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、上記は百人一首の中で桜を歌ったものの一部です。
 この時期、桜の開花や花見などが盛んに巷の話題になりますが、こんな歌もあります。

 「世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」

 世の中に桜というものがなかったなら、いつ咲くだろうか、雨風で散ってしまわないだろうかと心乱されることなく春をのどかな気持ちで過ごせるだろうに、在原業平はそんな気持ちを詠い古今和歌集に残したのが上の歌です。

 桜を愛でる日本人の心を表現した詩文はたくさんありますが、歌舞伎「楼門五山桐(ろうもんごさんのきり)」の中で、これから釜煎りされる大盗賊の石川五右衛門が煙管(キセル)片手に切った見得もこれまた有名です。


 「絶景かな、絶景かな。春の眺めは値千金とは、小せえ、小せえ。

  この五右衛門の目からは値万両、万々両。 

  もはや日も西に傾ぶき、まことに春の夕暮れに花の盛りもまたひとしお。

  はて、うららかな眺めじゃなぁ」