「枕石漱流」
 普段使っている日常の言葉で、なぜこんな字が当てられたのかとふと疑問に思うことがあります。
「流石(さすが)」などもそのひとつで、調べてみると次のような故事がありました。

 古代中国において、皇帝から帝位を譲ると言われた人物が、耳が汚れたと言って川で耳を洗ったという伝説があります。

 この伝説を踏まえ、隠遁を決意したある人が「世を捨てて、流れに漱ぎ(すすぎ)、石に枕して暮らしたい(枕石漱流:ちんせきそうりゅう)」と言うべきところを、「石に漱ぎ、流れに枕す(漱石枕流:そうせきちんりゅう)」と言ってしまいました。

 間違いを指摘された際、咄嗟(とっさ)に「枕流は世俗のくだらない話を聞いてもすぐに洗い流すため。漱石は歯を磨くためだ」と言い返したそうです。

 上記がという故事で、こじつけや負け惜しみが強いことを意味しており、上手いこじつけだと感心したところから、感心した際の「さすが」は「流石」の字があてられたようです。

 ちなみに夏目漱石の名も上記の故事に由来しており、当時の文部省から文学博士の称号を贈る旨のことを打診された際、漱石は「自分には肩書きは必要ない」として辞退したそうです。