「赤とんぼ」
 暑さ寒さも彼岸までとは申しますが、彼岸の中日から一気に気温が下がり、北海道では最低気温が0.5度まで冷え込んだところもあったとのこと。
夏を司る炎帝の勢力後退で、ようやく竜田姫の出番がまわってきましたが、そのすぐ後ろには冬将軍が迫っているようです。

 ところで、まだ暑気が残っていた先日の連休中、郊外では赤トンボの大群が秋の深まりを告げていました。

 トンボの名前の由来は「飛ぶ穂」あるいは「飛ぶ棒」とも言われますが、秋茜や深山茜に代表される赤トンボの古名は「秋津」と言い、実りの秋を象徴する虫として昔から愛されてきました。
古くは日本(本州)を秋津州(あきつしま)と呼んだのも、その形がトンボに似ているからだそうです。

 また、雄略天皇が、害虫を素早く捕らえるトンボの姿を歌に詠み、前進するのみで後退しない攻撃的な習性と相まって、トンボは昔から勝ち虫と呼ばれる縁起物として、戦国の世では兜や鎧などの装飾に好んでよく用いられました。

 「不転退(退くに転ぜず・決して退却をしない)」の精神を体現するトンボは武者好みの虫でしたが、童謡「赤とんぼ」のイメージが残る現代の私たちにとっては、どこか郷愁を誘う秋の虫です。