「カタクリの花」


 カタクリと聞いて、私たちがまず思い浮かべるものは片栗粉でしょう。
カタクリはユリ科に属し、根はりん茎となり良質のでんぷんがとれます。
現在の片栗粉はジャガイモのでんぷんで作られていますが、昔はその名の通りこのカタクリの根が使われていました。
カタクリはもともと日本にあった野草のようで、万葉集の中に次のような大伴家持の歌がみられます。

  もののふの 八十をとめらが くみまがふ
    寺井の上の 堅香子の花

(清水を汲みに集まる乙女たちの笑い声とその乙女たちを象徴するように咲いているカタクリ、そんな華やいだ情景が目に浮かんでくるようです。)

 堅香子(かたかご)は万葉仮名で正しく漢字で表すと「片鹿子」ではないかと、ナチュラリストの足田輝一さんは言っておられます。
これは、カタクリの葉が花をつけるもの以外は一枚(片葉)で、鹿の背のような斑点模様がついているからでしょう。
各地の方言でもカタコ、カタコユリ、カタバナなど カタ=片 という字が多く付けられています。