「重陽(菊)の節句」
 昨日は2009年9月9日。
9の三並びでなんだか縁起が良いような気がしますが、タイのバンコクでは「9」の発音が「前進」の意味を持つことから、結婚届けを提出するカップルや帝王切開などで出産する例が相次いだそうです。

 日本では「苦」に通じるとの理由で「九」という数字を嫌がる人もいますが、陰陽道では奇数は陽の数とされ、その極数である「九」が重なる九月九日は「重陽の節句」として祝う風習が昔からありました。

 この日は、不老長寿の霊草と信じられていた菊の花びらを杯に浮かべた菊酒を酌み交わし、お互いの長寿と無病息災を祝ったとされています。
このことから重陽の節句は「菊の節句」とも呼ばれます。

 ちなみに、菊は日本原産と思われがちですが、薬草として日本に伝わった中国原産の植物で、後に天皇家の御紋になり、慣習上の国花(菊と桜)にもなっています。
もちろん鑑賞用・園芸用として発展したのは日本に於いてであり、日本の菊が本家中国や欧州の菊事情に大きな影響を与えています。

 また、葬儀の際の献花に菊が用いられることが多いのは、古来から日本人に慕われてきた花であり、調達のし易さ、安価で長持ちするという理由の他、西洋で墓参用に用いられていたことの影響もあるようです。

 各地で菊花展や菊人形展が行われるのも重陽の節句に由来し、庶民の間では秋の収穫祭と習合し「お九日(おくんち)」として祝うようになったといいます。

 明治期に新暦に移行してからは季節とのズレが生じたことから、しだいに重陽の節句が廃れてきましたが、菊を愛でる風習や収穫祭としての意味合いは菊花展や九州北部の”くんち”として今も残ります。