「百果の宗(梨)」


 秋になって感じる涼しさは、夏の暑さの中で味わう涼しさとは異なります。
それゆえに今時分の涼しさは「新涼(しんりょう)」と呼ばれてます。

 処で、巷では秋の味覚や行楽が話題にのぼり、各地の梨狩園が賑わっているそうです。

 風邪などで喉が痛む時や痰がからむ時などに、梨を食べて楽になったという経験をお持ちの方も多いかと思いますが、古来から「百果の宗」と呼ばれる梨は、「大小便を利し、熱を去り、渇を止め、痰を開き、酒毒を解す」とされ、漢方薬などにも広く利用されてきた果実です。

 また、梨は有機酸やビタミン、ミナラル類などをバランスよく含んでいるため、夏バテ時の食欲増進や疲労回復にも効果が期待できます。

 現在、日本で栽培されている梨には、幸水、豊水、二十世紀、新高、愛甘水、新寿、清澄、八幸梨など様々な種類があるようですが、二十世紀梨の場合、軸が細く、肩と尻が張った扁平なもの、色つやが良く重いものがより美味しいと言います。
また、二十世紀梨は、熟度の進み具合により黄緑色から黄色になるため、シャキシャキした食感を楽しみたい人は黄緑色、甘味を好む人は黄色のものを選ぶと良いそうです。
尚、「梨尻柿頭」とのことわざにもありますように、梨は軸と反対の尻の部分が味が良く、皮の近くが最も甘くなっています。

 ちなみに、歌舞伎の世界を「梨園(りえん)」と呼ぶのは、唐の玄宗皇帝が梨の木が植えられた庭園で、音楽や舞踊などの芸を磨いたという故事に由来しているそうです。