「オバマ演説」
 先日行われたオバマ大統領の就任演説では、それまでの選挙演説で多用された「チェンジ(変革)」や「ホープ(希望)」といった単語はあまり用いられませんでした。
そこには厳しい現実を直視しそれに立ち向かうための重い「責任」。
大盛り上がりを期待して集まった聴衆の中には戸惑った人も少なくなかったようです。

 処で、日本の詩歌や散文、童謡・歌謡曲などには「韻を踏む(押韻)」という技法があります。これは同一または類似の音を要所要所で繰り返し用いることを言いますが、漢詩や洋楽でも韻を踏むことは原則のようになっています。
こうすることで規則性のある心地よいリズムが生まれ、それによりフレーズが覚えやすくなり、故にメッセージが伝わりやすく、駆け上がるような高揚を演出することも可能です。

 選挙期間中のオバマ氏の演説にもこの技法が多用され、同氏を有名にした04年の民主党大会での基調演説「リベラルなアメリカも保守的なアメリカもない。黒人のアメリカも白人のアメリカもない。あるのはアメリカ合衆国だ」にもそれを見ることができます。

 この演説原稿を見た日本のある専門家は「時事英語のような専門用語がなく、センテンスも短いので、とても分かりやすい。倫理の展開も絶妙で、クラシックの協奏曲を聴くようにリズミカルに読める」として驚嘆しています。
間の取り方や抑揚の付け方が巧みで、重要なメッセージを伝える時には決して大声を出さず静かに語りかけるようなスタイルも他の候補者との違いでした。
演説の上手さは当のアメリカでも「ジョン・F・ケネディ」の再来と言われるほどです。 

 押韻に限らず聴衆を引き込む多くの技法が駆使されたオバマ氏の選挙演説の映像が”ユーチューブ” にたくさんあり、「BarackObamadotcom」や「CangeDotGov」といったページも特設されています。
例えば「WeHave a Lot of Work to Do」と題する映像は、再構成されたものですが感動的ですね。

 「ローバリトン」(声域)の声で語るオバマ氏の選挙演説を収録した{CD付きオバマ本}も売れに売れています。購入者は老若男女を問わずで、「何を言っているのか分からないが、
感動した。
時代を変える若さとエネルギー」を感じるようです。
これを英語の教材に使う学校や英会話教室も全国で相次いでいるそうです。

 日本でのこの現象は他国でも報じられていますが、オバマ本の数も増え、増版が相次ぎ、発売されたばかりのDVDも品切れになるほで人気のようです。
オバマ氏はアメリカのみならず、日本の出版業界にも救世主となっています。
ちなみにオバマ氏の顔をかたどったおもちゃのゴム製マスクは生産が追いつかないほどに売れているそうです。