「立冬」
 今日は、暦の上で冬の始まりを告げる「立冬」。
昨日までの「秋晴れ」は、今日からは「冬晴れ」あるいは「小春日和」となります。

 季節感覚はまだ晩秋ですが、そろそろ暖房器具の準備をする時期です。
今日は旧暦で言えば亥の月(旧暦10月)の最初の亥の日で、陰陽五行では亥(いのしし)は極陰、すなわち水気であり、昔から亥の月の亥の日に暖房器具を使い始めると安全で火難を逃れるという言い伝えがあります。

 そういう習わしから亥月亥日は「炬燵の日」あるいは「炬燵開き」とされ、江戸の頃は武家では亥月最初の亥日、町民は亥月二の亥日に暖房を使い始めたそうです。

 そして、茶の湯でも今日は節となる日で、茶の湯のお正月とも言われる日です。
「炉開き」といって、それまでの風炉をしまい茶室に地炉を開き新茶を楽しみます。

 ワインの新酒のように、お茶の場合も摘んだばかりの新茶が好まれる風潮がありますが、昔は新茶をすぐに味わうのではなく、摘んだ新茶を茶壷に詰めた後に封をしてじっくり寝かせ、
青臭さが取れ、十分にコクと深みが出た晩秋の今頃、壷の口を切り、初めて今年の新茶を味わうというのが作法でした。
古くは朝廷への「献上茶」も幕府への「御用茶」も全てこの「口切り」のお茶が用いられてきました。

 先にも述べたように「亥」は極陰、極陰とは最も暗澹たる状態を指しており、新茶に命吹き込む「口切り」の儀式は「陰極まりて陽」を象徴しています。

 「亥」は十二支の最後でもあり、そこまでくれば次は「子」に転じ、また新しい循環が始まります。