「朝顔市」
 東京下町の入谷では、初夏の風物詩、朝顔市が明日から始まりますね。

 その昔、中国では朝顔の種を漢方薬として用い、牛と交換取引されるほど高価だったので、「牽牛子(けんごし)」と呼ばれていました。
その名にちなみ、入谷の朝顔市は例年七夕頃の開催でしたが、今年は洞爺湖サミットと日程が重なり警備の関係から日程をずらしての開催となっており、3連休と重なるため例年よりも多くの人出で賑わいそうです。

  「朝顔や 客が好みの 立ち話」水原秋櫻子

  「朝顔に つるべとられて もらひ水」加賀千代女

 朝顔市が開かれているのは入谷の真源寺付近で、“恐れ入谷の鬼子母神”で知られる鬼子母神はこのお寺の境内にあります。

 鬼子母神は仏教の神様で、自分で大勢の子供を持ちながら、人間の子供をさらって来ては食べていた恐ろしい鬼女でした。
それを聞いたお釈迦さまは鬼子母神の子供を隠し、子供を失う悲しみを悟らせ改心させたと言います。
故に鬼子母神の鬼という字にはツノがなく、安産、子授け、子育ての守護神として祀られています。

 また、鬼子母神が持つザクロにはたくさんの実が詰まっており、その一つ一つに種を持つことから、子孫繁栄をあらわす縁起のよい果物として「吉祥果」ともいわれてます。
鬼子母神が手にしたザクロには、子孫繁栄の願いが込められているというわけです。

 又、朝顔にはこのような話もあります。
朝顔が庭に一面に見事な花をつけたというので見物に来た秀吉を、千利休は全て摘み取り迎えました。
庭に花がないことをいぶかりながらも茶室に入った秀吉は、床に生けられた一輪の朝顔を見て感動したという、これが有名な「朝顔の茶会」です。