「でんでん虫」
 そういえば久しく見えなくなっている”でんでん虫”。
市街地では公園や園庭でも見かけなくなってます。、これも地球温暖化による土壌の乾燥や、ヒートアイランド現象(朝夕の気温が下がらないため霧の発生が減り、湿度も高くならない)が原因でしょうか。
 
 「角出して でんでんむしの涼みゐる」

 正岡子規の流れをくむ青木月斗は、今のような湿った空模様の日にこの歌を詠んだのかもしれませんね。
又、源平の頃の後白河法皇が編纂した「梁塵秘抄」には次のような囃し歌があります。

 「舞へ舞へ蝸牛(かたつぶり) 舞はぬものならば
  馬(むま)の子や牛の子に蹴(く)ゑさせてむ 踏破(ふみわら)せてむ
  まことに美しく舞うたらば 華の園まで遊ばせむ」

 上記の「舞え舞え」あるいは「巻き巻き」から転じた「まいまい」などの呼び名もありますが、もともと京都近辺の方言であった「かたつむり」という呼び名が共通語となってるようですね。
また、童謡の影響も大きく、「出よ出よ、むし」から変化した「でんでん虫」という呼び方も広く一般化しています。

 民俗学者の柳田国男はその著書で、蝸牛には180種以上の呼び方があるとしており、京都の方言であった「カタツムリ」を基点に言葉が地方に向かって同心円状に伝播して行き、結果として方言が形成されたのではないかとする「方言周圏論」を展開してます。

 雑事に追われ、時間に追われながら日々を過ごし、何事もクイックリーであることが求められる時代ですが、日常においてはでんでん虫のようなスローな生活が必要なのかもしれませんね。