今なら優しくできる 
お父さん、お母さん、お盆にお墓参りに行けなくてごめんなさい。
過去を悔んでも仕方ないけれど、もっと生きて貰いたかった。

年老いた親と一緒に過ごした年月も23年くらいで
縁が薄かったと思う。その後、私は別の町で暮らしていた。

お正月、お盆に賞与の中からお小遣いをあげれば、
父が「すまないね。」そして母が「ありがとう。」涙ぐんでいた。

生活費を何度か送った時も、「借用書を書く。」父が言った時、
「辞めて!返せないのに何故、嘘を言うの。お金なんて要らないから」
情けない親に私が怒れば、父も自分の情けなさに隠れて泣いて居た。

中学二年生頃から親にお小遣いを貰った事がなく、
バイトで自分の物を購入していたので勉強もしない女学生だった。

大晦日の夜までバイト先の店頭に立ち、「いらっしゃいませ。」
洋品店で他の高校から来た学生達と売上を上げる為に働いた。

雪の降る寒い夜に自宅に帰れば元日になっていた。
こんな生活が高校を卒業するまで続いて気が付けば
入社試験を受ける2月がやって来た。

勉強はしなくても運良く合格し、
大きな会社に入社する事が出来た。

社内で素敵な男性社員に声をかけられても、
笑顔で挨拶をして交際は断っていた。

交際をして結婚となれば、親の借金で結婚相手に迷惑がかかる。
そう思えば誰とも交際は出来なかった。

両親を憎んでいた昔、でも今は両親にもう一度会いたい。
会って優しい言葉をかけてあげたい。今なら優しくできる。