あなたが散った
 例えば、あくまでも例えばなんですけどね、物心ついてから今迄二十何年ずっと一人称に「俺」を使ってきた人がいきなりある日知人に「今日から『アタクシ』に変えて下さい。」と云われても、いきなり変えるのは無理ではないでしょうか。
 いや、無理とかそういう以前にその友人の言葉が理不尽な響きをもつものに僕には思える訳で。
 というか、まさに昨日僕が「今日から『ワタシ』に変えなさい。」といわれてしまったんですが。
 どうも相手の云う変えなきゃならない理由が納得いかん。「気持ち悪いから。」なんてのを理由にされていきなり一人称の変更を命じられた僕が素直に受け入れると思い込んでる相手の神経も実は可也理解出来ない。

 一応、一人称を変える努力はちまちまとしてきました。自分の事を「ワタシ」と云う度に背筋に走る悪寒を何とか堪えて、女性と話す際には極力「僕」を一人称に使わぬように心掛けてました。
 でも、偶に口からするっと抜けて出てしまうんですよ。ついうっかり「ワタシ」では無く「ボク」を使ってしまうんですよ。
 で、そのついうっかりの瞬間を捉えた第三者に「気持ち悪いから変えろ」と云われてしまったのです。

 そうか。気持ち悪いのですか。
 十五年以上前から私的な場では「僕」を一人称に使い続けてましたが、其処迄云う人は居ませんでした。中高生の頃はそれに近い事は何度か云われましたが、云われる度に反発心を感じ、反って「僕」を多使用してました。
 段々女性に対しては「私」をすんなり使える様になってきたので、後ちょっと違和感を我慢して頑張ればついうっかりもなくなる筈。