2015年04月の記事


花色香深
 「今は梅干婆あであれど 花の若い時や色香も深く 鶯鳴かせたこともある」(河竹黙阿弥作『質庫魂入替』より)

 母から彼女の若かりし頃の思い出話を聞く度に「鶯鳴かせたこともある」と脳内で歌うくせがついたのはいつだったのかもう忘れました。
 年を取ると思い出補正が強くなるのかと思っていたのですが、とうとう母の思い出補正の対象に自分も入ったようです。

 先日、頼まれごとがあって母と出歩いたのですが、その際に中学生の頃のあなたはこうだったと母から聞いた話がいまいち身に覚えのない話でした。
 例えば、中学生の頃自分の成績は学年の真ん中くらいだったと自分では記憶していたのですが、母の中の記憶の自分はいつも成績上位10位以内にいたようです。
 成績は良くても上位15位くらいじゃありませんでしたかね、と母に確認してみましたが、「英国数3教科の総合であなたはいつも5位以内にいた」らしいです。
 う~ん。誰か他の人と間違えてませんでしょうか。
 国語の成績だけでいえば、確かに5位以内でした。
 でも、中学生の頃は数学の成績が揮わなくて。確か、社会の成績は数学よりも遥かに酷くて。学校の試験では、点数の稼げない数学と更に悪い社会が総合順位を引き下げてました。上位10位以内にはいなかったはずです。

 そもそも中学の頃、成績が揮わない状態についていつも母に苦言を呈されていた記憶がはっきり残っています。あれは何だったのでしょう。
 不可解ですが、母の中の「自分の娘」像が母にとってはよりよいものに置き換わっているようなので、それを壊さないようにそっとしておきます。
 その為にも、未だにご丁寧に保管されている中学生の頃の自分の試験結果などの記録をこっそり実家から回収しておくことにします。
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