足りないものは方向感覚
 あのね、僕女性に弱いんですよ。
 女系が強い親族間盥回しになり、常に強き女性たちに「女性には親切に。」という精神を叩き込まれて育ったんですよ。
 その結果、年上だろうが年下だろうが女性には逆らえない性格に育ちました。僕自身も女性ではあるのですが、如何しても同性である筈の女性には逆らえません。何を頼まれても「今直ぐあの世に逝け。」というような無理な願い事で無い限り断れません。其の所為か女性と居るとどうも落ち着かず無暗に気を使って疲労します。
 因みに男性にはいくらでも逆らえます。男性に命令されても特に強制力を感じません。抗えないのは女性の命だけ。
 女子大に入ってから毎日否応無く女性の大群を目にし、日々大勢のお嬢さんと言葉を交わしたお陰で随分女性と話すのには慣れましたが…未だに女性のお願いは断り切れません。

 まぁ、そんな事はどうでもいいのだけど。
 明日京都で行われる葵祭(賀茂祭)を見に行こうと先週から数人の女のコに声を掛けていたのです。
 祭に大学の講義時間が重なる何人かのコは講義をサボって行くか否か迷っているようでしたので、全員に断られた時の為に他のコにも声を掛けておいたのがアダとなりました。
 いきなり今日になって、土曜日の講義は休講になり、迷う理由がなくなって、一緒に行くコが八人以上になっちゃいましたよ。
 しかも、お嬢さん達は道案内などを僕に任せる気らしい…。

 ぅゎー。如何するのさ。
 僕恐ろしく方向音痴なんですよ。
 幸い葵祭の行列が出発する京都御所は以前住んでたとこの近くで、其の付近なら何処に何があるか大体は判るけど。
 でも、行列の行先の下鴨神社付近はよく知りませんよ。
 下鴨神社からの帰り道とかよく知りませんよ。
 そりゃ確かに祭に行こうと言い出したのは僕だけど、本当に僕が道案内係でいいんですか。

 適当に歩いて行けば何とかなるだろう…かなぁ。
 「道案内は出来ない」と断ることが出来なかったので今夜のうちに地図と祭の次第を確認しておかねば。