死んで母国の鬼 「消えない記憶~満州“集団自決”の悲劇~」 1508
 北海道 戦後70年 第四回「消えない記憶~満州“集団自決”の悲劇~」

 今次の15年戦争.
 NHK総合「消えない記憶~満州“集団自決”の悲劇~」は、その見方、理解の視界を拡大する.しかも戦争を平和主義で解する以前に、人格・人権・人類の尊厳で位置づける思考の深化を迫る.番組を視聴しての実感.

 戦争
 それに戦死、自死、玉砕のほか自決があった.本土の都市空襲、被曝が言われるも、我が国の南西で沖縄戦があった.そのことを知る人は少なくない.
 しかし本邦の北東、樺太で真岡郵便電信局事件、満蒙で麻山(まさん)事件を知る人は、限られる.都市空襲、被曝は本土が戦場となったけれど、沖縄・樺太・満蒙はある意味、<内国植民地での悲劇>である.



 麻山事件.
 昭和20年8月12日、事件は現在の中華人民共和国・黒竜江省で起きた.満蒙開拓団で大陸にわたっていた国民学校の児童を中心にした婦女子465人が集団自決.
 ソ連軍侵攻などで危機に陥った「満蒙開拓団」が、「死んで母国の鬼となる」のもと、団長の自決をうけあと残った男たちが護身用の銃器で子ども、女性を介錯して殺戮する事件が起きている.

 哈達河(はたぼ)開拓団
 「消えない記憶~満州“集団自決”の悲劇~」は、「北海道戦後70年」の第4回目で放送された.
 昭和初期にはじまった満州国.建国と広大な地域で展開の農業開発.それを支えるために北海道から農民、模範農家の移転が積極的に奨励された.事件はその派遣者のなかに起きている.

 緻密に取材、丁寧に記録体系化
 奇跡的に帰還した生存者女性の記憶.実際に児童・女性を銃殺した男性の回想.後年、その両者が収骨のため現地に赴く.
 交流で、「悪いことをした」と涙した男性に、女性は「恨んではいない」.そう語った、と.
 麻山事件について、出版も証言も新聞報道もある.



 生還者の肉声、事件地の景観、犠牲者が通学した学校の現状などは映像媒体ならではの臨場感を示す.
 残されていた49巻のカセットテープを、丹念に解析し体系化することも緻密にして地道な作業の蓄積にほかならない.