大谷正著「戦場からの手紙」
大谷正著「戦場からの手紙」。日清戦争時、兵士や軍夫の手紙が戦況を伝える手段として地方のメディアを支えたという内容。(軍夫について「輜重輸卒のかわりに輸送業務にあたった臨時雇用の軍属」と注がある)。

 小規模な地方紙は多くの特派員など送ることもできず、かわりに故郷の家族あて私信が、戦争情報の不足を補ったのみならず、「郷土兵の生の声や動静を紙面に反映」させることができたのだとする(252p)。

 制度的には戦地からおくる「野戦郵便には検閲があった」とするも、実際には新聞に掲載された手紙から、「具体的な滞在地、今後の作戦、旅順虐殺や台湾のゲリラ戦のような残虐な軍事作戦がリアルに記されている」という。

 それは「昭和期の野戦郵便には書くことが許されなかった」内容とする。
 
 戦時慰問品のひとつに、絵ハガキがあった。
 なぜ、絵ハガキがとどけられたか?。考えているおり、こうした一文に接した。(三谷裕ほか『大人のための近現代史 19世紀編』 東京大学出版会 2009年)。