鳥居本幸代著「平安朝ファッション再発見」を読んでいた。テーマは色の発見と季節ごとの重色目。

 季節にあわせて着衣の色の選択と配色は、ある種、貴族社会に生きる女性の教養と見識であるかのようだ。中国・朝鮮から《原色》がもちこまれたのに、本邦では中間色が多様に組み立てられ、色彩感覚を磨いてゆく。

 磨いてゆくだけではなく、適応できないと、蹴落とされてしまうような、厳しい世界である。それが、式部や納言といった宮廷内作家によって、記述・講評される。

 寝殿造の内部で、そこはかとなくうかがわれる衣の美。豊かさ、情緒、含蓄。

 他面で、なかなか厳しい世界である。