赤トンボ
すっかり秋の気配が濃くなり、野山では「秋桜(コスモス)」が咲き始めています。

 コスモスは繊細な見た目とは違い、しっかりと大地に根を張り、踏まれても薙ぎ倒されてもまた立ち上がり花を咲かせる力強い植物です。

 また、低地ではそろそろ赤トンボを見かける時期です。

 トンボの名前の由来は「飛ぶ穂」あるいは「飛ぶ棒」とも言われますが、秋茜や深山茜に代表される赤トンボの古名は「秋津」と言い、実りの秋を象徴する虫として昔から愛されてきました。

 古くは日本(本州)を秋津州(あきつしま)と呼んだのも、神武天皇(神話上の初代天皇)が山々に囲まれた国の姿を、雌雄のトンボが交尾をしながら輪になって飛ぶ姿になぞらえたという故事に由来します。

 また、雄略天皇が、害虫を素早く捕らえるトンボの姿を歌に詠み、前進するのみで後退しない不退転の攻撃的な姿と相まって、トンボは昔から勝ち虫と呼ばれる武者好みの縁起物で、戦国の世では兜や鎧などの装飾に好んでよく用いられてます。

 昔の人はトンボに勇猛さを感じたようですが、童謡「赤とんぼ」のイメージが残る現代の私たちにとっては、どこか郷愁を誘う秋の虫です。