「神無月」
 十月は全国の八百万(やおよろず)の神々が、来年の天候、農作物や酒の出来不出来、人の縁結びなど諸々の相談のため出雲へ出払ってしまいますが、留守を預かる留守神もいます。

 その代表が、七福神の一柱で、烏帽子をかぶり、肩に釣竿、大きな鯛を抱えたご機嫌なおじさんの「恵比須さま(えべっさん)」です。恵比須さまは、海と漁業の神であり、農村にあっては田の神となり、商売繁盛の神でもあります。

 そして、恵比須さまを祭り、商売繁盛を祈念するのが「えびす講」です。
関西では正月十日の「十日えびす」が有名ですが、地域によって時期は様々で、昨日十月二十日に行ったところもあります。

 ちなみに、昔は中央の権力が及ばない異邦の者のことを「えみし」とか「えびす」と呼んでいたことから、恵比寿さまも外来の、海を渡ってくる神であったとされています。

 十月は神無月と申しますが、「神様が出払って居ないんだから自力でなんとかしろ」などと突き放したりせず、留守神を置くことで救済の余地を残しています。
程良い加減に曖昧さを残し融通をきかせる・・・先人の知恵です。