「春宵一刻値千金」
 はや、ひな祭りも終わり、土中に冬ごもりしていた虫たちが一斉に春のことぶれを感じ取り、地上に顔をのぞかせる頃です。

 奈良東大寺のお水取りも始まり、草木萌(も)え出る爛漫の春もすぐそこに来ています。


  『梅は匂い、桜は花、人は心ぞ、振りいらぬ』


という言葉を思い出しますが、梅はその香を、桜は花の美しさを、そして人は心を愛(め)でよ、といいます。

 そして、人は心があれば外見を飾りつけて装うことなどどうだっていいと言っています。単純なことを言っているようで、なかなかに含蓄が深く、日本古典の素晴らしさかもしれません。