「蓮見(はすみ)」
・見頃を迎えた埼玉・行田市の「古代蓮」
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秋は「紅葉狩り」、春は「花見」、そしてこの時期は朝早く起きて「蓮見(はすみ)」をするのが昔の風流でした。

 西洋で薔薇や百合が特別の意味を持つことに似て、蓮は東洋では特別な意味を持ちます。
泥中にあって汚れを寄せ付けずに気高く咲く花、大きく広が水を弾く凛とした葉、この姿が濁世にまみれず清らかに生きること、純粋さの象徴とされてきました。

 ヒンドゥー教の最高神の一人クリシュナ(日本では吉祥天)は、最高位の女性という意味で「蓮女(はすめ)」と言い、蓮の華は仏教では極楽浄土の象徴であり、仏陀が蓮華の上で瞑想する絵が描かれ、寺院では仏前に「常花」(じょうか)と呼ばれる金色の木製の蓮華が置かれていたりします。

 ところが日本では違った意味で使われることが多く、例えば「蓮の葉商い」と言えばキワモノやまがい物を売ることを指し、「蓮っ葉」あるいは「蓮女」と言えば「馴れ馴れしい」あるいは「浮気性の女性」という意味になります。

 他に蓮に関するものとしては、中華食器のレンゲ(散蓮華)は蓮の花と形が似ているところからその名があり、蓮の地下茎はレンコン(蓮根)として食用にされます。
また、蓮(英名ロータス)の葉はその微細構造と表面の化学的特性によって濡れることがなく(ロータス効果)、その研究から発展したのが現代の撥水加工技術です。

 ちなみに、蓮に似た睡蓮は夕方には花を閉じるので睡蓮(実際には蓮もそうです)。よく似ていますが、花は睡蓮の方が小ぶりで、ほとんどの睡蓮の花は水面で咲き、蓮は水面から花茎を立てて花開きます。睡蓮は葉も水面に漂い、表面には光沢があって切り込みがあるのが特徴で、蓮の葉は水面より高く展開
し、光沢がなく撥水性があり、めしべ等のつくりも違います。仏教でいう蓮は本来は睡蓮のことだそうです。

 2000年以上前の種子が現代に発芽し、開花したというほど生命力が強く、泥水の中で育ちながら美しく神秘的な花を咲かせる蓮。7月の誕生花でもある蓮の花が、各地で見頃を迎えています。