風よ
風よ、歩く私にどうして強くぶつかってくるの?
昨日は、優しい言葉で会話してくれたのに、何故、直ぐに心変わりするの。

私は、堂々と歩いているのに、風よ、貴方は、自分の姿、形を隠し
人間や自然の光景ばかり見つめ、一体、何を考えているの。

庭の一角に咲いた柿の花も落とし、たわわに実った枇杷の実を落とし、
風邪で眠っている病人に、すうすうと入り込み、咳をさせる。

私ね、風って透明で美しいものだと思っていたの。
人の心身を心地よくさせてくれると思っていたの。

今迄、凍てつく極寒、酷暑を耐え、重き土を擡げて
僅かな隙間から出た花々を、全部散らしてしまった風。

風よ、貴方を憎くて言うのではないのよ!只、心の中を正直に見せてね。
心を開き、「私は、××よ!」と言ってくれたら、嬉しいわ。

風の色が黒ければ黒でいいじゃない!黄色なら黄色でいいじゃない!
素直に語ってくれたら、それだけで私は、貴方に優しくなれるの。

庭を吹く風に、私が語りかけた瞬間、見据える未来、太陽が顔を出し、
光りの中に、明るい明日を風が運んでくれそうな気がしてならない。