焦心苦慮
 「人生細かいこと気にしちゃ駄目ですよ」と、可愛らしい声で男性に言っている妙齢の女性を一昨日見掛けました。
 カラオケ屋の入り口で聞こえたその科白は、以前の僕の口癖でした。
 そしてその口癖は母の口癖でもありました。

 母と暮らさなくなってから何年か経ち、日々着実に母の影響が薄れて僕の性質は更に大人しくなっていっている気がします。
 ただ単に歳を取っただけの事かも知れないけれど。
 偶に実家に帰って家業を手伝う度にかつてのように無駄に元気でいやにぴりぴりした性格に戻るので、恐らく僕の十代後半までの性格は殆ど母によって形成されていたのでしょう。

 僕の母は常にポジティブな発言をしようと心掛ける人です。
 心掛けるだけで実行出来てはいないんだけども。
 エレナ・ホグマン・ポーターの人気小説の主人公のように何でもかんでも良い側面を見出してみようとしているようです。

 人生細かいこと気にしちゃ駄目ですよ。

 僕はいつからこれを自分に言わなくなったんだろう。