嫉視反目
 他人が自分より幸せに見えるのって、きっと年齢を重ねると自分の思い込みだと気付くんでしょうねぇ。

 中学生の頃、僕には周囲の人達が皆羨ましくて、自分のおかれた状況が疎ましくて堪りませんでした。
 僕が頻繁にとる誤った態度の原因を学校の教師や一部の生徒は父が早くに亡くなった所為だと勘違いしていたのにも苛立っていました。
 自分の状況を医師に話しても診断書には反映されなくて、僕と同じ状況に陥っている僕の母の言葉を添えても医師の対応は変わらなくて。
 母のように僕と同様の事故に遭って同様の状況の陥った人には説明をすれば理解して貰えていたけれど、学校にはそんな人が一人も居ませんでした。

 最近、治らない病を抱えた家族と暮らす人に色々八つ当たりをされる機会がありました。
 「あなたみたいな幸せな人には私の悩みなんてわからないんでしょうけれど」なんて言ってるその人に、僕は全く同じ病を抱えた家族が僕にも居る事を言いそびれてしまいました。
 僕にとってはこういう事は二人目で、今回は何とか自分の気持ちと折り合いを付けようと心がけて残りの時間を大切にしています。
 でも、初めての時は、家族の病の進行状況を知ったばかりの時は、そうじゃなくて周囲に苛立ちをぶつけてしまってました。
 だから、苛立ちを僕にぶつけるそのお嬢さんに「どうして何も言い返さないの?」と言われて本当に困りました。
 今更同じような状況に僕も居る事を言ってお嬢さんに気を遣わせたくは無かったし、苛立ってるお嬢さんの気持ちがわからなくもなかったから。