実になるもの
 ちょっと前の盆に実家に帰った時、お母様が仕事では無く「趣味」としてやっていた畑仕事の量を増やしたのを知りました。
 其の前からも畑仕事はやっていたけど、耕す面積を倍にして前よりも熱心に畑仕事に打ち込んでいる母の現状を知りました。

 仕事は仕事で年中無休の仕事が別にあり、とても土いじりをする時間なんて持てない筈なのに。それなのに、朝仕事を始める前の一時間、夕方仕事の合間の三十分、夜中仕事帰りの三十分、と少しずつ時間をとって畑を増やしていったそうです。
 土を弄って、野菜の種を植えて、毎日毎日植物に水をやり肥料をやり愛情を傾けていると必ず成果が実るから。だから畑仕事を始めたのだと母は言ってました。
 仕事も子育ても人間関係も何もかも、心を傾けて頑張ったけどどれも思ったような成果が直ぐには出なくて。けれども植物なら素直に成果を見せてくれるから、と笑顔で言ってました。

 望んだかたちに育たなくてごめんなさい。と、僕は素直に口には出しませんでした。
 母の言葉は厭味でなかった分余計に後からじんわりきます。
 じんわりと、尻に火を点けられて急かされてます。