あるだろうけど
 葬式のドキュメンタリー番組を見てしまいました。
 ああいうの見ると誰かに自分の持っている葬儀の際に知っておくと便利な豆知識を披露したくなってしまいます。
 そんなのを誰かに言った所で鬱陶しいだけ。

 余所様の家族の葬儀を見ると、十年以上前の父の葬式で頼んでも居ないのに近所の奥様方が押し寄せた時の事も思い出します。
 奥様方は「人手は足りてますから結構です。」と言う僕の親族の制止をものともせず、家の其処彼処を見て回り、仕舞いこんであった食器などのあらゆる物品を「使うかも知れ無い」と引き摺り出してゆきました。
 親戚の数が妙に多い家系で育ちましたので、僕も僕の母も何十回も親族の葬儀に参加し葬式の手順には慣れてました。手伝いに来る親族も大勢―50名以上―居ましたから、本当に人手は足りていたのです。
 他人の葬式を手伝うのは慣れているからと家に押し寄せた奥様方の行為は本当に余計なお世話でした。

 通夜が終わり、告別式も終わった後、奥様方はやっと去ってくれました。
 葬儀の最中ずっとあーでもないこーでもないと口やら手やらを出されましたが、何とか終わりを迎えました。
 但し、奥様方の何人かは「これはウチが貸したものだと思う」と口々に言いながら、葬儀で客に使った食器の類いを皆持ち帰ってゆき…。食器なんて借りていただろうか、と後で確認したら客用に揃えていた食器セットの数が減ってましたよ。
 葬儀の後で疲れ切っていた母と僕は何も言う気力がなくなっており、奥様方から食器を取り返したり相手の勘違いを訂正するのがもう面倒で、元から無かったのだと思う事にして放置しました。

 確かに彼女等の中には善意があったのだろうけど…善意以外のものは出さないで欲しかったな。