お返しは同額で
 お祝い返しは同額で、なんてのは中部地方のそれも岐阜の一部だけの風習なのでしょうか。
 岐阜の僕の周辺では、結婚式で貰ったお祝いのお金は後でほぼ同額のお祝い返しをしないと散々周囲の皆に「非常識」と云われる羽目に陥りました。
 葬式の香典返しもそうだけど、何もかもがそう。
 入学や進学、成人式のお祝いも同様にお祝いに何か貰ったらほぼ同額の品でお返しをしないと、表面上はいくら付き合いがよくても裏では何を云われるか判りません。
 引っ越しの時の挨拶の品もそう。引っ越しの挨拶にと小品を貰った後、お返しに何か同額程度の品を携えて新参のお宅を訪問しないと「付き合いが悪い」やら「常識を知らない」等と、其の後また新しく誰かが引っ越してくるまで近所のオバ様方に散々に噂される事になるのです。地方限定の常識を語るオバ様方に従うのは癪ですが、僕の実家はサービス業でしたので近隣の風習に逆らわずにいつもお祝い返しをしてました。
 お祝いを貰ったら、後に相手に祝い事があった時にお祝いを贈ってもお返しになりません。それはそれ、これはこれ。貰ったら直ぐ返さなければ、悪評は免れません。
 お返しを必要としない唯一の例外はお年玉だけ。
 そんな環境で僕は育ちました。

 さて、「今時の賃貸マンションで引っ越したその日に手土産を携えて同じ階の住人に挨拶してまわる人なんて居無いと思ってました。」と、去年の今日の日付のこの日記に僕は書きましたが。
 前言撤回します。居ましたよ。それも今年も居ましたよ。

 昼過ぎに外出した際、同じ階に引っ越してきたばかりらしいお嬢さんとそのお母様に出くわしました。
 そのお母様に其の場で多少質問責めにあいましたが、急いでいたので適当に笑顔で「失礼します」と流して出掛けてしまいました。一応気になったので、用事済ませて帰る時に適当に千円以内程度で和菓子買って帰りました。
 案の定、僕の帰宅後僕の部屋のインターホンが鳴り、斜め後に母親を伴ったお嬢さんが「これから宜しくお願いします」と何か手土産らしきものを渡して下さいました。
 渡された瞬間に「有り難う御座います。これどうぞ。」と予め後手に持って居た和菓子の包みをお嬢さんに渡しました。
 京大の近くにある満月という和菓子屋さんのお菓子で…と、まともなお菓子である事を伝えつつ、「では、有り難う御座いました。」と、笑顔作ってドア閉めようとしたら母親の方に止められ色々訊かれました。
 去年挨拶にいらしたお隣さんのお母様には大学の事について色々訊かれましたけど、今度引っ越してきたお隣のお隣のお母様は大学の履修よりも何よりも娘の生活の方が気に掛かるみたいで「この辺で一番近くにあるスーパーは何処ですか」と実に具体的な事を真っ先にお訊きになりましたよ。
 何だか去年より好印象。去年のお隣のお母様は笑顔なのに目が笑っておらず、「娘と仲良くしてやって下さい」と有無を云わせぬ口調で詰め寄ってこられたので非常に印象悪かったのです。ありゃぁ逆効果でしたよ。お陰でお隣さんをずっと避けてました。

 お祝い返しは同額で。
 其の考えで和菓子をお返しに直ぐ渡したのですけども。何故だか僕に和菓子をお返しで貰った其の親子はわたわたと慌てて驚いてました。僕のお返しは親子にとって予想外だったみたいです。
 若しかしたらお返しは要らなかったのだろうか。賃貸マンションで態々引っ越しの挨拶に来るような丁寧な人にはこちらも丁寧にお返ししなきゃと思って去年のお隣さんにも小品を渡したのだけど。

 てか、どうでもいいけどお嬢さんが引っ越してきた部屋って以前僕が問い合わせた不動産屋が「南西向き」だと言い張っていた北向きの部屋でした。
 いい物件ではあるのだから、北向きだと最初から云っていても入居希望者はちゃんと着ただろうに。何故あの不動産屋は嘘なんか吐いてたのだろうか。