初恋の君
「恋愛結婚なんて愚の骨頂。ましてや初恋の人と結婚だなんてとんでも無い。そこにあるのは薄っぺらな幸せだけです。恋愛と結婚は質が違うのです。」
 妙に恋愛結婚感を語る中年男性がいた。
 余りに同じ事ばかり語るので若しや彼は初恋の人と恋愛結婚をして大失敗したのかと思ったがそうでは無いらしい。
 彼の初恋の人は中学二年の時に亡くなり、だから自分の初恋の思い出はいつまでも美しい侭なのだと彼は云う。
 
 初恋の君がどれだけ醜く老いぼれ様と生きてた方が僕には良い。
 いつか美しい老い方をした相手に再会出来得るかも知れぬと空想するのが愉しいから。
 例え相手が月日の流れに逆らわず見事に老いさらばえて居様とも、初恋の君は他とは比べ様も無く美しいのだから。